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この文章は,『月刊ポスドク第4号 (2015年12月発行) に寄稿したものです.編集・発行者の許可を得て,こちらに転載しました.


学振研究員が科研費に応募する際の「研究期間の制限」について

ちょうど2年前の平成26年度採択分から,学振研究員 (PD, RPD, SPD) であっても,特別研究員奨励費以外の科研費に応募ができるようになりました.研究課題をさらに進展させるためなどで研究費を必要とする場合には,ほかの研究者と同様,そのための予算を交付してもらえるよう,学振の科研費に応募できるようになったわけです.

ただし,所属している研究機関によっては,学振研究員の任期を超える期間での応募ができないという (おそらく) ローカルなルールが存在する場合があります.本稿では,そうしたルールの存在と,そうしたルールがあった際にどうすれば良いかについて,書いてみたいと思います.


ローカルルール「研究期間の制限」

具体例を挙げて説明しましょう.たとえば,採用期間3年の学振PDが,残り2年を残した時点で,研究期間4年で若手(B)などに課題を提出しようとした際,所属機関の事務から,「学振の任期の後に身分の保証ができないから,学振任期内の2年間にして課題を提出してください」というように差し戻されてしまう場合があるのです.私自身がそのような体験をしましたし,別機関に所属する知人の研究者も,同様の対応にあったと話していました※1

所属機関における対応の是非は置いておいて,学振の規定上はどうなっているかを確認してみましょう.『日本学術振興会特別研究員遵守事項および諸手続の手引』の19ページを参照すると,以下4つの事項をすべて満たす場合にのみ,特別研究員奨励費以外の研究費を受給することが可能であるということが書かれています.

  1. 特別研究員の研究課題の研究遂行に支障が生じないこと
  2. 受給する研究費が特別研究員の研究課題と同一でないこと
  3. 研究費を助成する制度が特別研究員による受給を認めていること
  4. 当該特別研究員が受け入れ研究機関として本会に届け出ている研究機関において受給すること

また『平成28年度科研費公募要領 (特別推進研究,基盤研究,挑戦的萌芽研究,若手研究)』の69ページには以下のようにあります.

応募の際には、特別研究員としての採用期間を超える形での応募を認めないといった運用を行わないようにしてください。

さらにもうひとつ,学振が発表した制度改善に関する平成25年の報告書『特別研究員制度の改善について』の3ページには以下のような文章が見られます.

平成25年9月に開始した科研費の募集については、可能な受入機関からの対応としたが、受入機関により特別研究員の研究の進展に差が生じることのない取扱いとする必要があることから、平成27年度以降の特別研究員(PD等)の新規受入機関の要件として、科研費への応募を希望する特別研究員(PD等)に対して、応募資格を付与することを求めることとする。

学振としては,上記のような「研究期間の制限」は,できるだけ認めない方針のように見受けられます.


どうすれば良いか

学振研究員の方は,奨励費以外の科研費への応募を考えたとき,「研究期間の制限」に関するルールについて,所属機関に対してまず確認をしてみるのが良いのではないでしょうか.提出締め切り間際になってやっとまとめた申請書が,ルールにひっかかり「期間を短縮してください」と差し戻されてしまうのはもっとも避けたいところです.現状を把握し対応に十分な時間を取れるよう,提出締め切りよりもっと前に,所属機関事務の科研費担当の方などに,「研究期間の制限」に関する決まりはありますか,と尋ねてみるのが良いでしょう.

これでもし「あります」と返事が返ってきた場合には,次なる対策が必要になりますでしょうか.私はこの段階で,任期を超えた年数が必要である理由を説明し,そうした制限の根拠を尋ね,可能であればさらなる交渉が可能な部署について質問するメールを担当の事務の方に差し上げました※2.そうすると,幸いなことに,その方が大学の研究推進掛に問い合わせてくださり,「やはり差し支えありませんでした (が,学振の身分がなくなる前に次の身分を獲得してください)」という返事をいただきました.(括弧のなかに書いた部分が心にのしかかってはきますが) まずはほっとひと安心です.

私は幸いにここまでで「制限」を超えられましたが,担当の方からのお返事もネガティブだった場合,どうすれば良いのでしょうか…….ひとつ考えられるのは,上記の学振の規定などを根拠に,再度問い合わせてみることでしょうか.もうひとつは,所属研究室やつながりのある研究室に相談をして,学振の任期終了後もポスドクとして (たとえば給料はほとんど出ないが科研費は使えるといったようなポストとして) 置かせてもらえるよう話をつけて,そうした保障をもとに交渉してみることでしょうか.SNSなどを利用して,同様の憂き目にあった研究者を探して相談してみるのも手かもしれませんね…….


※1 またまた別機関に所属する知人は,そんなルールはなかった,と話していました.

※2 書くまでもないことではありますが,このとき注意したいのは,個人攻撃をしないということでしょうか……窓口になってくださる事務の方が決めている方針ではないでしょうし,あくまでも建設的に,相談や話し合いをしたいものです.研究者が研究に集中できるのも,事務の方が代わりにいろいろお仕事をしてくださっているおかげですし.


謝辞

本稿に情報やコメントをくださいました久世濃子さんに感謝申し上げます.




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