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この文章は,『月刊ポスドク第7号 (2016年12月発行) に寄稿したものです.編集・発行者の許可を得て,こちらに転載しました.

蔦谷匠. 2017. 共同利用・共同研究拠点の研究費. 月刊ポスドク 7:4–5.


共同利用・共同研究拠点の研究費

ここでは,「共同利用・共同研究拠点」の研究費について紹介します.この研究費には,以下のような特徴があるかなと思います.順に説明していきます.


共同利用・共同研究拠点とは?

まずそもそも「共同利用・共同研究拠点」とは,文部科学省が2008年からはじめた制度によって整備された,研究者が共同で研究を行うための体制です.つまり,拠点となる研究組織 (◯◯研究センターや◯◯研究所) が,共同研究のための窓口を開いて,設備や資料などを使わせてくれる上に,研究費までつけてくれる制度,ということになります.

文部科学省のWebページを参照すると,以下のような説明があります※1

我が国の学術研究の発展には、個々の大学の枠を越えて大型の研究設備や大量の資料・データ等を全国の研究者が共同で利用したり、共同研究を行う「共同利用・共同研究」のシステムが大きく貢献してきました。
平成20年7月に、学校教育法施行規則を改正し、国公私立大学を通じたシステムとして、新たに文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定制度を設けました。

平成29年4月1日現在,53大学 (28国立大学,25公私立大学) 105拠点が認定されており,理学・工学系が45拠点,医学・生物学系が38拠点,人文・社会学系が22拠点とのことです※1


特定の研究技術や領域にフォーカス

共同利用・共同研究は各拠点で募集されていますが,研究センターや研究所が拠点になることがほとんどという性格上,それなりに特定の研究領域や研究技術に的を絞ったものが多いようです.どのような拠点がどのような領域の共同研究テーマを募集しているかは,注※1に記した文部科学省のWebページより,一覧をご覧くだされば,なんとなくわかるかなと思います.比較的自由に共同研究を募集する形態と,拠点がある程度テーマを決めて,それに沿った共同研究を募集する形態があるような印象を私は持っています.

高価な大型設備にアクセスできるようになることがある点も,共同利用のメリットです.ポスドクは一時的にでも職を得るため,自分の専門とは必ずしも合致しない研究室に所属することがよくあります.たとえば,研究の遂行に高価な大型機器が必要だが,現在の所属先にはそうした機器がないというときなどに,共同利用がそのジレンマを解消してくれる場合があります.そうした機器を共同利用に開放している拠点で,ちょうどうまく募集テーマと自身の研究が重なれば,多少の予算までいただきながら,分析ができる場合があるのです.


斜めのつながり

共同利用・共同研究に応募する際には,その拠点に所属する教員に事前に連絡をとり,共同研究の承諾を得る場合がほとんどではないかと思います.私も実際に,学会などで知り合った教員の方に,申請を考えている旨の連絡をとり,一緒に研究計画を考えて,申請書を添削していただいたりした後に,共同利用・共同研究に申請しました.

こうしたプロセスを通じて,分野がちょっと異なる,世代が上の研究者と,研究上のつながりができます.共同利用・共同研究のテーマを一緒に進めていけるだけでなく,別に取り組んでいる研究に対して,思わぬ助言や協力がいただける場合もあります.そこから,共同利用・共同研究とは別の型式で,共同研究が始まることもあるかもしれません.

異なる研究グループにおける研究の進め方を学べる点も,共同利用のメリットのひとつでしょう.これまで慣れてきたのとは異なった環境で,実験・分析の手順や,日々の研究を進めていく上での作法や文化などを,直に見て学ぶことができます.そうした慣習の良いところを持ち帰って,自身の研究に活かせば,データの精度や研究遂行の効率性を高めることができます.


比較的少額の研究費

共同利用・共同研究をするには,申請書を出す必要がありますが,多くの場合,埋めるべき欄は,そこまで大きくはないように思います (ここ数年間で私が申請した2拠点では,科研費の申請書の5分の1くらいの大きさだったようなイメージです).自身のケースや周りを見ていても,事前にきちんと担当教員と打ち合わせをしており,また,それほど申込みが殺到するような拠点でもなければ,原則的には採択されることが多いように思います.

また,1年間の共同研究プロジェクトで,数万円から数十万円の予算がつくことがあります.科研費などと比べると少額ではありますが,旅費や物品購入などに使えますので,私を含めたポスドクくらいの独立研究者にとっては,これくらいの金額であっても,ずいぶんと助かることが多いのではないでしょうか.

私が利用した2拠点では,費用は自分の科研費などから出すが,設備や資料だけ利用したい,という形態でも申請が可能でした.もし予算が潤沢なら,そうした選択肢を検討してみても良いかもしれません.


※1 共同利用・共同研究拠点(Joint Usage / Research Center)| 文部科学省 (2017年5月20日閲覧)



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