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有珠モシリ遺跡における授乳・離乳習慣復元



背景

人類集団の授乳・離乳習慣 (子供に何歳までお乳を与えて,何歳からどのような離乳食を食べさせるか,など) は,その集団の出生力や健康状態と密接に関わっています.授乳・離乳習慣を復元することで,過去の人類の生活様式,人口動態,生活史の進化について,さまざまな情報を得ることができます.

遺跡から発掘されたヒトの体組織 (骨など) に,同位体分析という手法を適用することで,過去の人びとの食べ物,授乳期間,離乳食の内容などを復元することができます.これは,食物や母乳に含まれる安定同位体がトレーサーとなって,ヒトの体組織に記録されるためです.



対象・方法

対象としたのは,有珠モシリ遺跡 (北海道・続縄文時代) から発掘された子供,大人,動物の骨です.本州に弥生文化が浸透していった頃,北海道では縄文的な文化がまだ存続していました.この2300–1700年前頃の北海道は続縄文時代と呼ばれています.

歯がどの程度生えているか,四肢骨の長さはどのくらいか,といった基準から,共同研究者に協力をいただき,それぞれの子供の年齢を推定しました.骨資料の調査・採取の際には,伊達市噴火湾文化研究所にご協力をいただきました.



結果・考察

同位体分析とデータ解析の結果,有珠モシリ遺跡の大人は,摂取タンパク質の25%程度を海水魚から,60%程度を海棲哺乳類から得ていたことが示唆されました.近世までの北海道の人類集団が海産物に大きく依存していたことは,考古学や他の同位体研究でも示されています.大人では,食性の男女差や大きな個人差は見られませんでした.

その一方,有珠モシリ遺跡の子供は以下ふたつのグループにわかれました.

  1. 生後すぐに陸生食物の影響が大きく見られるグループ
  2. 比較的遅く (約4歳以前) まで授乳され,離乳後は大人と同じような食性を示すグループ
1のグループの子供では,陸生植物などを多く含む食物が生後すぐに与えられていた可能性と,母親の妊娠中の食事が通常のものと異なっていた可能性が考えられます.

おもしろいことに,20世紀の北海道・サハリンのアイヌ集団の民族学的調査に,百合根やハナウドを用いた乳幼児向け食物の記録や,妊娠中の食物禁忌に関する記述があります.もちろん直接的な比較はできませんが,続縄文時代の人びとにもこうした習慣があったと考えると,子供で見られた複数のグループがうまく説明できます.



論文情報

Tsutaya T, Sawada J, Dodo Y, Mukai H, Yoneda M. 2013. Isotopic evidence of dietary variability in subadults at the Usu-moshiri site of the Epi-Jomon culture, Japan. Journal of Archaeological Science 40: 3914–3925. DOI: 10.1016/j.jas.2013.05.015.


参考文献

イザベラ・バード (金坂清則 訳). 2012–2013. 完訳 日本奥地紀行. 平凡社, 東京.

野村崇, 宇田川洋 編. 2003. 続縄文・オホーツク文化. 北海道新聞社, 札幌.


雑記

下の写真は,夕陽の沈む噴火湾に有珠モシリの小島を望んだところ (2008年9月18日撮影).「モシリ」とは,大地や島を指すアイヌの言葉だそうです.

Usum-moshiri Island in the sunset




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