この文章は,『Anthropological Letters』第8巻1号 (2020年3月発行) に寄稿したものです.人類学若手の会とアンケート回答者の許可を得て,こちらに転載しました.
蔦谷匠. 2020. 研究者のアカデミア就職に関するアンケート. Anthropological Letters 8:9–16.
研究者のアカデミア就職に関するアンケート
本稿では、アカデミアで任期なしの職に就こうと考えている若手研究者の参考になるよう、ここ数年で公募を通じて助教または准教授相当の職に就いた若手研究者へのアンケート調査を実施し (実施期間は2020年1–2月) 、その回答を項目ごとに編集しまとめました。アカデミア就職では公募を通じて採用されることが重要となってきていますが、若手研究者が書類審査や面接においてどのような対策をとり、どのようなものが成功しているかに関しては、具体的な情報はほとんど公になっていません。そうした「秘伝のこつ」を明文化し共有することで、若手研究者のあいだの情報格差を小さくでき、公平な採用プロセスの実現が近づくのではないかと考え、このような企画を実施しました。なによりもまず、とても忙しいなかアンケートに回答する時間を割いてくださり、実体験にもとづく貴重な情報を提供してくださった回答者のみなさまに、心からのお礼を申し上げます。
文中の引用部分は、アンケート回答者からの回答を抜き出して示したものです。個人情報が特定できそうな部分の除外、てにをはやスタイルの統一、省略による短縮化などを施していますが、できるかぎり元の回答を残す形で掲載しています。
基本情報
アンケート回答者は12名。うち女性3名、男性9名。勤務先は国内の大学や研究機関が9名、海外の大学が3名。専門分野は生物人類学とその関連分野。職位は助教または准教授相当。任期あり、任期なし、テニュアトラック期間中が混在。
アンケート項目の回答のまとめ
主にどういうところで募集情報を探していましたか? 現職の募集はどこで知りましたか?
すべてインターネットサイトで、国内で職を得た回答者のほぼ全員がJREC-INを挙げていました。学会や大学のウェブサイトを調べるというコメントも多く見られました。ほかには、Indeed、EvolDir、ecoevojobsが挙がっていました。
JREC-INではメールアラートを多くの回答者が利用していましたが、設定に細かな調整が重要であるとのコメントも見られました。
現職の募集もJREC-INに登録されていましたが、マッチングメールに引っ掛かりませんでした。たしかインターネットで調べて公募情報を見つけたと記憶しています。
JREC-INは皆さんチェックすると思いますが、分野非限定の場合には検索に引っかからないことも多いので、学会や規模の大きい総合大学の教員公募のHPなどはチェックしておくと良いかもしれません。
アカデミア就職において参考にしたものはなんでしょうか?(先輩のアドバイス、書籍、ウェブサイト、独学、などなど)
先輩や教員や友人研究者などの人からのアドバイスを参考にしていたと回答された方が7名、ウェブサイトが4名、独学が3名でした (重複あり)。応募時に海外の大学に所属されていた方は、指導教員や大学のサポート部門が書類や面接について細かいサポートを提供してくれた、と書かれていました。
参考にされたウェブサイト (現在でも閲覧可能なもの) には以下のようなものが挙げられていました。
採用までに、何年かけて何件程度応募して、面接までは何件くらい呼ばれましたか?
回答のあった11名では、就活期間には1−4年間の幅があり、平均応募件数は21±15件 (3–50件) でした。書類選考を通過していた応募の割合は22±18% (4–60%)、面接を通過して採用まで至っていた応募の割合は9±10% (2–33%) でした (図1)。
一般的には、公募には数十から数百件出さないと通らないと言われますが、本インタビューの回答の傾向を鑑みると、生物人類学とその関連分野では、個人差は大きいものの、《公募に通った人では》、応募件数はそれよりは少なめのようです。
書類選考を通過できる(ショートリストまでたどり着ける)書類のコツや必要な業績がありましたら教えてください。
研究面と教育面についての回答が多く寄せられました。全体的には、公募の条件と自分の業績や能力がいかによくマッチしているかを示すのが良いようです。
公募対象をきちんと把握し、それに合わせた公募書類にする。研究内容も、大きい分野で重なっているだけでなく、教員構成や大学の方向性も加味し、内容を合わせる。
自分を全部売るというよりも、公募の職務内容を見て、そこにフォーカスしたら良いと思います。
研究面では、論文のほかに、外部資金の獲得歴や、(国際) 共同研究の経験なども重要であるようです。
Excitingな研究計画 (Scientificな側面とGrantが取れそうなという側面の両方です) とそれに見合う研究業績が必要だと思います。
研究中心のポストであれば、応募先のラボメンバーや学科内、学部内にいる人の研究内容を見て、誰々とこんなコラボができる、等を記しても良いかもしれません。
教育面では、非常勤講師などを経験しておくことが強く勧められていました。
矛盾した言い方になるが「教えた経験のない人間は教えることができない」と選考委員は本気で思っている。ポスドクは研究に集中したいと思うが、研究の合間に非常勤講義を担当することをおすすめする。
初めてPIになる場合は、学生の指導も含めた展望をわかりやすくする。私大では、多いところだと10名以上の卒論生の面倒を見る場合がある。自身の研究だけでなく、卒論のテーマなどにも発展することが分かりやすい方が採用側は安心するはず。
応募書類を効率的に準備するためにしていたことがあれば教えてください。
業績一覧をふだんからアップデートして最新のものにしておく、という回答が複数寄せられました。そのほかの部分では回答が少なめでした。それぞれに内容の違う公募に対して、応募書類を効率的に準備するのは困難なのかもしれません。
やはり、時間をかけて書いたものは面接まで通過した印象があります。効率的に準備する方法は分かりませんが、柱となる内容の書類から、それぞれの公募に合うようにブラッシュアップしていました。
学生やポスドクの応募者があまり知らないと思うけれどやっておいたほうがいいよ、ということがあれば教えてください。
採用に関する人的ネットワークについての回答が多く寄せられました。
最近の公募が公正に広く門を開いているとはいえ、コネクションの力が働くところはまだある……かもしれません。そうでなくても、実力が同じくらいの候補者であれば、選ぶ側も顔を知っていると知らないでは、心情的に知っている方を選ぶ可能性が高いと思います。もちろん自分の能力を磨いておかないと諸刃の剣ですが、色々な意味で広くコネクションがあるのは良いことだと思います。
公募に応募する際は採用担当者(教員、特に選考委員長)に、意中の人物がいるかどうか、自分の業績は考慮に値するかどうか、応募前に問い合わせるとよい。返答である程度の感触が分かる。特にいわゆる「出来公募」かどうかを見分けることができるので、無駄打ちを防ぐことができる。
研究や教育面でも、より長期的な、教員の側に立った視点が重要であるようです。
私立大学は、研究面も重要だが、より運営・教育面での貢献が重視される。そのため、さまざまな研究者との共同研究は、コミュニケーションに問題ないことを示す材料になりうる。学生指導の面を考えると、自身より下の世代の研究者との共同研究 (とくに研究室以外の研究者との) はアピールの材料になりうる。
ポスドク後にアカデミックで職を探すことを希望するのであれば、自分自身が5年、あるいは10年かけて何を明らかにしていきたいか、そのためにどのような研究チームを作っていきたいか、といった大きなビジョンを考えることが重要ではないかと思います。
国内外での学会やそのほかの機会でネットワーキングをされていたら、その内容や注意点について教えてください。
「特になし」という回答が多く、特に自分から積極的にネットワーキング活動をされていたわけではなかったようです。研究者や社会に暮らす人としてまっとうな活動を続けることが、もっとも良いネットワークを築く方法なのかもしれません。
関連学会で、継続して良い発表を心がけること。
何がきっかけで次につながるのか分からないため、学会のソーシャルギャザリングは積極的に利用するようにしていました。結局は人と人が仕事をするため、面識があるかないかはある程度採用時のKeyになると感じています。特に、小さな研究室やセンターなどではその傾向が強い印象があります。
学生やポスドクとして、そもそもどういう組織に所属するかという点も重要であるというコメントもありました。
学会も重要ですが、ポスドク時代に所属していた大学には、非常にアクティビティが高いラボが多く、そこには必然的に優秀な人材が集まってくるので、その中でのネットワークはとても重要でした。
面接/キャンパス訪問のスケジュールや内容について教えてください。
面接の時間は数十分が多かったようです。面接に加えて研究発表 (公開セミナーの場合も多い) や模擬授業がある場合もあるようです。多くの面接はわりとあっさりしている一方で、以下に示すように、学科の教員全員と個別に面接をしたり、長時間にわたって手厚く面接がなされる場合もあるようです。
初日面接は朝9時に会場入りし、午後6時まで学科の教員ほぼ全員と30分個別面接。昼食、夕食は教員と同席。二日目、引き続き各教員と個別面接。昼食は選考委員と同席。午後より1時間公開セミナーで発表、30分間質疑応答。その後、非公開のチョークトーク1時間半。その後、大学の研究担当理事と30分面接。最後に学部長と再び面接30分。
会場には所属先の准教授・教授が勢揃いしており、かなりのプレッシャーを感じた。最終面接では、自身のこれまでの研究成果、教育成果、採用後の研究計画、採用後の大学院教育への抱負などを、専攻の教授・准教授陣を前にしてかなり長時間に渡って発表した。私の他にも数名の方が同日程で面接をしていたようだった。
面接/キャンパス訪問の注意点やアドバイスがありましたら教えてください。
身だしなみに注意するといった、一般的な面接のときと同様の注意点が挙げられていました。そのほかには、研究に関連する、アカデミア就職に特有のアドバイスもありました。
面接の前に共同研究できそうな人に会っても良いかと学部長に尋ねたところ大丈夫そうだったので、何人か会って研究内容や大学について話を聞きました。自分の緊張をほぐすのにも役立ったので良かったです。
当たり前ではあるが、対象の学部や学科について、きちんと把握しておく必要がある。何が自身の特徴なのか、就職後はどのような研究を展開するのかをきちんとアピールする必要がある。とくに、大学院の指導教員との共著しかない場合は、業績が多くても評価が難しいので、自身の特徴についてのアピールは重要となりうる。
面接時は産後3ヶ月で、スーツのジャケットのボタンが留まらなくて (笑)、仕方ないから開けたままでした。CV見れば育休中なのは分かるはずですが、ちゃんと読んでない先生もおられると思うので、子育て中なのが伝わるようにプレゼンしました。
面接で聞かれた意外な質問があれば教えてください。
「特にない」という回答がほとんどでした。逆に言えば、きちんと準備をしておけば、面接にはきちんと対処できるということなのかもしれません。
大学院生をたくさんリクルートするためのアイディアがあれば教えてほしい、というのはあった。大学院生不足はどこでも深刻なので、こういったことにアイディアを出せることは、教員として採用される条件として大事かもしれない。
採用の決め手になったとご自身で思う/教員から示唆されたものはなんでしょう?
多くの回答者は「わからない」と答えていました。回答があったなかでは、公募条件とのマッチングや、業績や教歴が挙げられていました。
研究費の獲得状況が一番の決め手だったと言われたように記憶している。昨今どこの大学も財政が厳しいので、超大型の研究費を持っていなくとも、コンスタントに複数の研究費を代表で獲得できていることは強みだと思う。
採用されてからなぜ私になったかと同僚に聞いたら、もう一人の候補者が危険思想を示唆するような発言をしたそうです。また、面接まで残らなかった人の中には、募集分野の研究をやってもいないのに応募してきた人もいるそうです。なので、私は可もなく不可もなく、分野があっていて、授業スタッフの即戦力となると思われたのではないでしょうか。
上司からは、小規模な組織なのでもめ事を起こさない・人当たりの良さも大事だったと言われたことがあります。
採用後にちらちら漏れ聞く感じでは、業績が抜きん出ていた、プレゼンがすごく良かった、特に分野が遠い先生方から評価が高かった、人物照会も秘密裏に電話で行われていて照会者からも人物面で評価が高かった、とのことでした。
応募や赴任にあたり、家族の人生との兼ね合いはどのように考慮されましたか?(配偶者の仕事や居住地、子供の教育、親の介護など)
回答者の半数は「特に考慮しなかった」と答え、残りの半数は、応募する公募の地域を限定するか、単身赴任などの形態で対処したと答えていました。アカデミアでの就職事情は年々厳しくなっており、ポストにつけるなら贅沢は言っていられない、という側面もありそうです。
子供がいて、当時同じく研究職の配偶者は遠隔地に就職していたので、親の支援が受けられて、かつ配偶者も転職先を見つけやすい大都市圏ということで東京近辺に限定して職探ししていました。子供ができる前は、二人とも就職しやすそうな大都市圏であれば、関東にこだわらずに出していました。
学生やポスドクの頃と比べて、現在の仕事について良い側面や悪い側面があれば教えてください。
大学運営や教育に費やす時間が増え研究の時間が減ったことをほとんどの回答者が挙げていましたが、運営業務や教育も大学教員や研究者として重要な職務なので、必ずしも悪いこととは言い切れない、やりがいや楽しみも感じる、というコメントも多く見られました。また、PIとして自由に研究ができることのほか、共同研究の機会が増えたり学生から新しい視点を得ることで研究の幅が広がるというコメントもあり、研究に割ける時間が減る代わりに得られるメリットも大きいようです。収入増加、福利厚生、将来の見通しの立てやすさは良い側面として評価されていました。
研究だけを考えると、自分の自由に研究ができるのは学生のときだけである。自身の研究に集中できる点でポスドク時代の方がよい気がする。とくに、長期に海外に行くのは、多くの大学では難しいので、そのような研究分野の場合は、ポスドク時代に貯めたデータが重要となる気がする。一方、近年は、就活のこともあるので、ポスドク時代も焦って、研究が進みにくい気もする。
学生の頃よりも研究の幅が広がりました。それは、この組織に来たためだと強く感じています。また、教員になることで、カウンターパートとの研究手続きが進めやすくなりました。
研究分野的に学生と研究を進めやすいこともあり、大学に就職し、卒論生を抱えていることで、研究の視野が広がった。もちろん、学務や講義に忙しく時間は十分に取れないが、このメリットは大きい。また、講義で様々なトピックを扱うことにより、研究の位置づけや新たな研究の発想は生まれやすい気がする。
ポスドクの頃は一刻も早く安定した教員職につきたかったものだが、いま考えると研究だけをやっていれば良いという幸せな時間でもあった。趣味の時間も十分に取れていた。
自由に研究ができて、子育てとの両立にも理解がある良いところに就職できたと思っています。育休などのサポートはさすがに常勤の教員はポスドク時代とは手厚さが違います。
学振PDでも自由に研究活動が行えましたが、大学とも学振とも雇用関係にないため自営業扱いで、現職のほうが福利厚生面で恵まれています。
学生やポスドクの応募者に伝えたいことがあれば教えてください。(今のうちからやっておくとよいこと、アドバイス、考え方など)
学生やポスドクのときからしっかり論文を書いて業績を積んでおくことが重要とのアドバイスが多い一方で、日本のアカデミアに対する悲観的な見方と、そのもとでどう振る舞えば良いかに関するアドバイスも寄せられました。
自分の研究に少しでも関係していそうな公募があれば、多少応募当時の研究分野から離れていても強引に応募書類を出していました。そういったものは所詮付け焼き刃で、全て面接にすら呼ばれませんでした。ただ、人それぞれの置かれている状況は違うので一概には言えませんし、分野を絞りすぎるのもまた難しいことだと思います。ですが、ある程度は自分に適した公募をじっくり見定めてから応募したほうが、無駄な時間を費やさずに済むのかもしれません。
ある程度、自分がどういう分野でどういう職につくのかをイメージしておいた方がよい。そうしておくと、そのために何が必要か、自ずと見えてくると思う。ただ、やみくもに公募に合わせて出すだけだとなかなか難しい気がする。自分にフィットする公募の数は少ないが、それが出た場合にきちんと対応できる準備をしておくことが重要だと思う。また、自身の研究の幅を広げ、自分にフィットする職の幅を広げる意識も重要だと思う。ただし、無理に広げても、その専門の研究者に太刀打ちできないと意味がないので、自分の売りを意識することが重要だと思う。
広い視点でポストを探し、場合によっては異分野に飛び込む勇気も必要。歳を重ねるほど、この勇気が (能力も) なくなっていくので、若い内に自分の専門分野外にネットワークを作っておくことが大事。また、任期なしのポストにつくと研究以外の業務の負担も増えて、なかなか思うように研究が進まなくなることもある。効率的な時間の使い方を身につけることが大事。
ポスドクは研究人生最後の夏休み。自分の研究に打ち込んで、成果を出して、良い就職につなげてください。いま、日本では人類学周辺の有能なポスドク人材が枯渇気味なので、きちんと研究ができればポスドクの仕事は見つかると思います。ただし、教員として認められるには、研究能力以上に、マネジメント能力やコミュニケーション能力が求められます。自分のコンフォートゾーンの外側の新領域へ足を踏み出す勇気と好奇心も必要です。
学生・ポスドクの頃のほうがたくさんの時間を研究に割くことができました。その分、よく手を動かして論文を書いていたと思います。あの頃の自分が今の自分を支えてくれていると、とても感謝しています。学生の時に、「あなたの研究は広く浅い」と言われたことがあります。ただ、その広い視野があったからこそ、自分にしかできない研究がつくれたと思っています。たくさんの研究分野の方と出会って視野を広げることは、交友関係を広げるだけでなく、オリジナリティのある研究を生み出すためにもとても大事だと思います。
「研究しかしません。」という方は敬遠されると思います。とにかく、人員削減で煩雑な業務が増えており、それに対応できる人材が求められがちです。したがって、大学の教員を目指される方は幅広い仕事 (単純に言えば雑用) も厭わない覚悟が必要かもですね。
国内の公募状況はとても保守的になっていて、野心的な人をどこも取れなくなっています。身も蓋もないですが必要最低限の数本の業績さえあれば十分で、抜きん出た業績は全く不要です。自分より業績が少ない人に公募で負けても腹を立てたりしないよう心がけましょう。
近しい知り合いがおらずコネのない専攻のガチ (だったと思う) 公募でありがたいことに職を得ることができましたが、これはかなり運が良かったと思っています。色々漏れ聞く話は、世の中なかなかどうして業績至上主義になりきらず、すでに所属している方々との関係性 (ようはコネ) が大きく影響するようです。若い (学生の) うちから、「あの子、優秀だな~」と印象付けて、色々なプロジェクトに関わってきちんと成果を挙げる (論文出す) ことが大事なんじゃないかなと思います。
科研費で自身の研究に必要な備品を購入しておくこと。就職後に必要な環境がないかもしれない。共同研究の仲間を作っておくこと。指導教官は確実に引退してしまう。応募先の上司や同僚の人柄を把握しておくこと。就職後にパワハラ・アカハラを受けるとすぐには解決できなくなる。
ポストをつかむという観点のみでのアドバイスとしては、研究領域の発展性と日本国内における社会的需要について時流を読むことが重要かと思います。人類学以外の学問領域とのポストの取り合いになるわけですので、その競争に有利になるために、自身のポスト確保を優先しなければならない理由を考えておくと良いかと思います。
まとめ
回答から引き出せる全般的な結論をまとめます。
- 応募書類では、公募条件と自身とのマッチングを説得力を持って示すことが重要。
- 研究業績だけでなく、研究費獲得歴、非常勤講師の教育歴、大学運営能力も重視される。
- 面接はしっかり準備すれば (たぶん) 大丈夫。
- 学生やポスドク時代にたくさん研究をしておきましょう。
- 長期的・俯瞰的なビジョンを持ちましょう。
アカデミアの就職事情は年々厳しくなっており、大学や研究機関で任期なしの職につくことを目指すのであれば、それなりの覚悟と戦略と準備が必要になってくるのではないでしょうか。アカデミア就職においては、業績は必要条件であるだけで十分条件にはならず、タイミングと縁も重要であるという話も聞きます。たとえ、就職の可否がある程度運頼みであっても、自分の力ですこしでも確率を上げられるところがあるのであれば、なんとかそうしたいものです。本稿のアンケート結果が、そうした若手研究者の助けになれば幸いです。
ただし、「生存バイアス」にご注意ください。本稿のアンケートに答えてくださった回答者のみなさまは、回答時点でアカデミアでの研究活動を続けられている方々であり、学位をとったりポスドクを続けたあとに、大学や研究機関を就職先に選ばず、アカデミアを離れた方々ではありません。また、アンケート結果からは、個人差が非常に大きいという傾向も見えています。
アカデミアでの就職だけが博士号取得者のキャリアではありませんし、自分が納得できるキャリアは自分で調査し、分析し、実現することもできます。SNSなどにあふれる扇情的な言説にいたずらに心をかき乱されず、正確な情報をもとに、たしかな戦略をもって、アカデミア就職にせよそうでないにせよ、自身に納得のいくキャリアを追求することが大事ではないかと思います。
最後に、繰り返しになりますが、アンケートに回答してくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。