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この文章は,naganaoさんと共同執筆し,『月刊ポスドク』第2号 (2014年12月発行) に寄稿したものです.naganaoさん,および,編集・発行者の許可を得て,こちらに転載しました.

なお,研究室や研究機関での宿泊は,災害時以外は禁止されている場合もあり,本稿はむやみにそうした場所での宿泊を勧めるものではないことを付記しておきます.

tsutatsuta, naganao. 2014. 熟睡! ラボ寝の最前線. 月刊ポスドク 2:8–11.


熟睡! ラボ寝の最前線

「終電なくなっちゃったね…///」「今日もラボ寝か」


そう,研究室で眠りにつかねばならない夜は突然やってきます.仕事上の不測の事態だけでなく,天災や,研究に集中して気づいたら終電を逃していたなんてことも.どういうところに気をつけておけば良いかあらかじめ知っておけば,不安や興奮の入り混じったラボ寝の夜も快適に過ごせます.

ここでは,経験を積んだラボ寝ラーである筆者たちが,そのエッセンスを大公開しちゃいます.わたくしtsutatsuta (申し遅れましたがこんにちは,大学院生・男性・ラボ寝歴通算6年であります) の文章に,要所でnaganaoさんのコメントが入ります.なお,本稿では,横になることを「寝る」,睡眠をとることを「眠る」と表記してあります.


こんにちは。プロのラボ寝ラーで現役JK(助教)アイドル(※自称)*1のnaganaoです。本日はtsutatsutaさんとともに、学生時代からポスドク時代にかけて磨きに磨いたラボ寝の奥儀を伝授したいと思います。特にわたくしめは女性でありますが故、以下に紹介してもらうtsutatsutaさんの高度なラボ寝テクニックに、女子力のエッセンスを鮮やかに撒き散らしていきます。悩める理系乙女の参考になれば幸いです。デュフフ。


アイテム

下に敷くもの

tsutatsuta (以下t) クッション性のほかに重要なのが断熱性です.あんがい見過ごされがちですが,敷物でしっかり断熱しないと,床にどんどん体温が吸い込まれていき,眠るどころではなくなってしまいます.

そこでお勧めしたいのが段ボール.1枚敷くだけで,空気の層があなたの体温を強力に保持してくれます.数が手に入る場合は,立体のまま底を抜いた箱を複数つなげて潜り込むのがお勧めです.ミニテントのような安心感と,さらなる保温性が得られることでしょう.


naganao (以下n) 断熱性の観点では、レジャー用の銀マットもオヌヌメです。ラボ寝上等!な実験系の研究室になると、ソファーベッドや携帯式エアーベッドが完備されているところもありますね。私が学生の頃は、実験室が土禁のカーペット張りという恵まれた環境だったので、座椅子で寝ていました。ポスドク時代は主にソファーベッドを利用させてもらっていました。小さめの椅子を3~4個並べてその上に寝るという人もいますが、あれは椅子が動いたりして結構腰にきます(爆)


上にかけるもの

t ストールや膝掛けなど,なければ新聞紙でも大丈夫.保温だけなら重ね着でも代替可能ですが,安心感という重要なおまけがついてきます.ラボ寝という非常事態において,大きな布 (紙) に体が覆い隠されている状況は,想像以上に安心感を喚起するものです.緊張しながら寝るのでは,疲れもとれないことでしょうし.


身にまとうもの

t お気に入りの服は皺にしたくないですし,タイトなデニムに締めつけられながら眠ったりするのも勘弁願いたいもの.ロッカーの片隅に,寝間着がわりのジャージやTシャツを常備しておくと良いかもしれません.ラボ寝の非常事態だけでなく,急な運動や雨に降られたときにも活用できますね.


n やはり女子たるもの、極力寝顔は人に見せたくない!ということで、大き目のマスクをかけて眠っていましたね…(しばし回顧)。空調で部屋が乾燥していることも多いので、マスクは必須です。あ、ちょうど後輩に激写されてしまった寝姿の写真が残っているので公開しちゃいます。キャラクターもののブランケットを折りたたんで枕にしているところにそこはかとない女子力を感じさせますね。

タイトなジーンズにねじ込むのは戦うボディであって (このネタどのくらいの年代まで通じるんだろう)、休憩で仮眠を取る際はジャージに着替えていました。で、うっかり次の日も帰るまでジャージのまんまっていうね。


Sleeping form of a female

図1. 乙女の寝姿(当時修士2年生かそこら)。


小物

t まずは自分の睡眠が何に弱いのかを把握し,その上で対策をすることです.光があると眠れないならアイマスク,音に敏感なら耳栓,喉が弱ければマスク,冷え性なら靴下,頭の高さ調節にはタオルを丸めたり.これらの小物もロッカーや引き出しの隅にでも置いておきましょう.己の睡眠を知れば百夜百眠危うからずです.


n 着替えなどの保管場所をどうするのか…というのは気になるところだと思います。鍵つきの個人ロッカーまでは無かったので、自分用に割り当てられた研究室の棚に、鍵つきの小型スーツケースを置いておき、そこに着替えや洗面用具を置いていました。これでしばらくラボで生活することができました。ラボ泊の最長記録は博士課程3年時とポスドク時の2週間です!自慢にならないですね!良い子のみんなはできるだけ帰りましょう!


場所

暗くて静か

t 安眠のためには暗くて静かな場所や部屋がベストです.そうした場所はつまり,人の出入りが少ないところでもありますので,他の人にかける迷惑も少なく抑えられます.ただし,防犯の観点からはどうなのでしょう……また怪談なんかに弱い人は……考えはじめると眠れなくなってきます.


物理的な危険に気をつける

t たとえば地震があったとき! 大量の本に圧し潰されたり,薬品やガラスまみれになる場所は望ましくありません.また,そこは人の常駐が想定されている部屋でしょうか? 夜間は紫外線が照射されたり,火事のときにハロゲンガスが充満されたりしたら危険です.寝相は良いほうですか? 壊してはいけない貴重な資料などがまわりにないことを確認しましょう.


n 私くらいのプロのラボ寝ラーになると、狭かろうが人の出入りが激しかろうが明るかろうが、横にさえなれれば少し眠って、体力を回復させることができます!皆さんもラボ寝道を究め…なくていいですほんとすいません。最近の大学や研究機関には仮眠室がある建物もあるので、仮眠室があればそこを利用するのがベストなんですけどね~。筆者の出身学科には無かったので、どこでも眠れるサバイバル耐性が身についてしまいました。


設備

シャワー

t ラボのある建物にシャワー室があれば最高です.さっぱりした気分で眠りにつくこともできますし,寝ぐせのついたぼさぼさの姿で翌日を過ごすのを防ぐこともできます.

ちなみに,水場が利用できなくても,アルコールティッシュで首筋・脇・内股・足の先などを拭くだけで (トイレの個室とかでやりましょうね),べとつき感はそうとう軽減され,快適な睡眠を迎えることができます.


n なかなかラボのある建物にはシャワー室がうまいことないかもしれませんが…。幸い私の場合、学生時代は学内にスポーツジムがあり、ポスドク時代を過ごした関西の秘境の某放射光施設にもシャワー室が完備されていて、助かりました。学生時代は銭湯もよく利用していましたね。あれ広い浴槽が気持ちいいんですよね~~~。…本題に戻りますか。女子の場合、働く場所を選ぶ基準のとして「トイレの清潔さ」が重要かと思いますが、理系女子 (特に実験系) の場合、「ラボ泊の際のシャワー」も重要な基準になるかもしれませんね。


A research institute and Bussei-ken

図2. naganaoがポスドク時代をすごした秘境の某研究施設。手前はnaganaoがデザインを手がけた東大物性研の準公式キャラクター「物性犬」(さりげなく宣伝)。


寝具

t もともと寝具が置いてある場合は,気がついたときに洗濯や陽干ししておくと良いでしょう.そうした共有アイテムはえてして汚いことが多く,いざラボ寝が必要な事態になったとき,予想もしなかったカビやノミにテンションを下げられるのは御免被りたいもの…….


n やはり自分が安眠しやすい (ラボで安眠するなというツッコミはおいておいて) 寝具というのは人それぞれ違うので、私はMy毛布を常備していました。もふっもふっ。壁用の防音材を寝具にしている先輩もいました。


閉じ込め・締め出し

t 普段と違う時間帯に慣れない行動をするので,カードキーはきちんと携帯しておきましょう.自動的に鍵がかかって閉じ込められたり締め出されたりしないよう…….


心構え

眠れなくても良いのです

t 普段と状況の違うラボ寝では,なかなか眠りにつけない方も多いことと思います.眠らなければと思うとますます眠れなくなりますが,暗いところで静かに横になっているだけでも体力はだいぶ回復します.非日常を楽しむくらいの余裕があるのが私の理想です.


ほかの人に迷惑をかけない

t 謙虚にこそっと眠りましょう.人が横になっているのを突然目にすると,けっこうぎょっとするものです.朝一番の人がやってくる前には起きておいて,さも早起きをして出勤して来たかのような顔をしておきましょう.


中毒に気をつけて

t ラボ寝テクニックの向上とともに自信がついて,さらに夢を追い求めたくなる気持ちはよくわかります.私もそうしてスキルを磨いたものです…….ですが,一番よく眠れるのはやっぱり我が家でしょうし,調子にのって無理をすると体をこわす恐れもあります.日常的なラボ寝の特権は体力のある学部生や院生にゆずりわたして,あくまで非常事態に限定しておく気概が,きっとポスドク生活にメリハリを生むことでしょう.


n ラボ寝は手放しに推奨できるものではありません。私も、目覚めたら額に「肉」と書かれた付箋が貼られていた、目覚めたら寝始めた場所と違う場所にいた(邪魔だったので同僚が引きずって移動させたらしい)、爆睡している最中に教授と招聘研究者の先生が入ってこられて、教授が私を“Don’t mind it!” (herじゃない) と紹介していた、など、乙女にとって幾多の苦難と戦ってきました…涙なしには語れません…(ノД`)・゜・。それでもラボ寝道を極めてきたのは、研究に対する熱い情熱があったからこそです!研究は身体が資本です!!ノーベル賞をとるには長生きしなきゃいけません!!!研究が長期戦になって帰宅しにくい際にも、「ラボ寝」という休憩手法を取り入れることで健やかな研究生活が営めればいいかなと思っています。


*1 2014年当時、2017年現在も現役JK(女性研究員)





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