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ウガンダの森林における霊長類の異種間グルーミング



背景

チンパンジーとほかの霊長類が同じ森林のなかに暮らしているケースがよくありますが、これらのあいだの相互作用は、これまで、狩猟を主とする攻撃的なものばかりが注目されてきました。実は、チンパンジーは、小型のサルや哺乳類を狩猟して、その肉を食べることがあるのです。ヒト以外の霊長類では唯一、比較的頻繁な狩猟と肉食をするのがチンパンジーです。人類進化の観点から、チンパンジーの狩猟・肉食行動には研究者の興味が集まってきました。

しかし、チンパンジーとサルのあいだの友好的な相互作用については、これまできちんと調べた研究がなく、少数の例が逸話的に報告されているだけでした。本研究では、カリンズ森林保護区 (ウガンダ) で見られた4例の友好的な相互作用に注目して、その状況を記述するとともに、それらの事例の共通点などを考察しました。



対象・方法

観察が行なわれたのはウガンダのブシェニ県にあるカリンズ森林保護区です。この森では、1992年から京都大学の研究者らによって調査が継続されいます。

調査中にチンパンジーとほかの霊長類のあいだで友好的な相互作用を見たことがあるかを、この森で調査している研究者たちに質問し、事例を集めました。私が観察した1例に加え、さらに3例の報告を研究者 (共著者) たちから寄せていただきました。



結果・考察

1例では、鮮明な動画を撮影できました。母親が近くで休息している最中、5歳のコドモチンパンジーがレッドテイルモンキーの単独オスを何度かグルーミング (毛づくろい) しましたが、その逆は観察されませんでした。レッドテイルモンキーのほうはグルーミングしてほしいと思われる部位をコドモチンパンジーに提示し、積極的に催促をしているように見受けられました。


ほかの3例では、レッドテイルモンキーのほかに、ブルーモンキーがチンパンジーの母子やメスに近づき、グルーミングがなされたり、チンパンジーのコドモは興味を持ったものの、母親が追い払ったりといった状況が観察されました。

これらの事例に共通していたことのひとつは、サルの側が単独オスだったことです。レッドテイルモンキーやブルーモンキーは、1頭のオスが多数のメスを抱え込むハーレムのような群れを作ります。そこからあぶれたオスは単独で行動し、どこかの群れをのっとるチャンスをうかがいます。しかし単独で行動していると、ひとりでは取れない部位にダニがついたりして、衛生上問題が生じたりします。こうした問題を解決するため、単独オスはチンパンジーから積極的にグルーミングを受ける動機があるのかもしれません。

しかし、むやみにチンパンジーに近づくと、狩猟されて殺されるおそれもあります。こうしたリスクを避けるため、サルは、群れから離れている母子やメスに近づくと考えられます。サルを狩猟するのはオスが主で、特に自分たちの群れの本体から離れて過ごしているチンパンジーのメスやコドモは、単独で積極的に狩猟をすることがほとんどありません。4事例に共通していたのは、チンパンジー側にオトナのオスが含まれなかったことで、サルのほうも相手を選んでチンパンジーに近づいていると考えられます。



論文情報

Tsutaya T, Aruga N, Matsuo H, Hashimoto C. 2018. Four cases of grooming sessions between chimpanzees and guenons at the Kalinzu Forest Reserve, Uganda. Pan Africa News 25: 5–7.



雑記

森のなかで異種間グルーミングを観察したときには、最初、自分の目が信じられませんでした。チンパンジーのコドモのすぐ横に、レッドテイルモンキーの特徴的なふさふさしたしっぽが垂れ下がっているのに気づき、近づいてみて状況を理解し、そこからあわててビデオを撮影し始めたことを覚えています。

写真は、レッドテイルモンキーどうしでグルーミングをしているところ (2015年11月撮影)。

Sea bream at the JR Akashi Station, Hyogo, Japan




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